珠算式暗算(そろばん式暗算)の練習方法、コツ、やり方について。
珠算式暗算では、頭の中にある「イメージのそろばんの珠」をはじいて計算・暗算します。実際のそろばん本体は使用しません。紙やペン、電卓などの計算機も必要としません。
計算道具は何も使いませんが、珠算式暗算をマスターすれば、いつでもどこでも暗算できるようになります。一度習得すると非常に便利なスキルとなるでしょう。
この記事では、珠算式暗算(そろばん式暗算)を身につけるための練習方法やコツ、珠算式暗算のやり方を分かりやすく解説します。
珠算式暗算とは
珠算式暗算とは、そろばんを頭の中にイメージし、思い描いたそろばんを使って暗算を行う計算技術です。計算工程は、すべて「頭の中でイメージしたそろばん」で行いますので、実際のそろばんは使用しません。
珠算式暗算(読み方:しゅざんしきあんざん)は、別名「そろばん式暗算」とも呼ばれます。珠算式暗算の土台になるのは「そろばん技術」です。実際のそろばんを使い慣れていればいるほど、珠算式暗算の技術も向上する傾向があります。
珠算式暗算(そろばん式暗算)のコツ・やり方
珠算式暗算をマスターすれば、以下のような「暗算ができない」のお悩みが解消します。
- 暗算の途中で数字を忘れてしまう
- 桁数が増えると、混乱して暗算どころではなくなる
- 暗算はできるが、計算スピードが遅い
- 「暗算できた!」と思って回答を見ると、間違っている
「正確に暗算できるようになりたい」「暗算が早くなりたい」とお考えの人は、以下の珠算式暗算(そろばん式暗算)のコツ・やり方をチェックしてください。
珠算式暗算コツ①そろばんを頭の中でイメージする
珠算式暗算(そろばん式暗算)では、頭の中でイメージしたそろばんを用いて計算を行います。
一般的な暗算方法と、珠算式暗算の違い
そろばんを触った経験がない人は「言葉」を使って計算します。例えば「26+9」を「にじゅうろくたすきゅう」と言葉に変換し、「10繰り上がって……」と筆算のように答えを求める場合が多いです。
対して、そろばん経験者は、計算の途中で「26」「9」などの数字は意識しません。かわりに、頭にイメージしたそろばんに珠を置き、「26」の形になった珠へ「9」を加えます。(1珠をはらった後、十の位の珠をひとつ置く)
画像作成元:無料そろばんゲーム
珠算式暗算では、計算結果を1枚の絵として思い描くため、桁数が増えても正確・スピーディに暗算できます。
珠算式暗算なら、桁数が増えても正確に早く計算できる
一般的な暗算は「言葉」を司る「左脳」を使って計算を行いますが、珠算式暗算(そろばん式暗算)ではイメージ力に関連する「右脳」のチカラで答えを導きます。
一般的な暗算 | 珠算式暗算 | |
脳の働き | 左脳 | 右脳 |
計算方法 | 言語で計算 筆算式暗算 | そろばんを想像して計算 |
暗算スピード | 時間がかかる | 瞬時に計算 |
桁数 | 桁が増えるとミスしやすい | 桁が増えても正確 |
筆算を用いた計算方法では、少ない桁数の暗算にしか対応できません。桁数が増えると脳が混乱し、暗算結果にミスが生じます。
「言語計算」は数字を頭の中で一回一回文字に変換して、それを記憶しつつ計算を進めるというイメージです。そのため、非常に時間がかかり、桁が大きくなればなるほど「ミスしやすくなったり」「計算ができない」という問題が出てきます。
「珠算式計算」ではイメージ上とはいえ「そろばん」を利用しているため、速く、正確に計算できます。計算結果は1枚の絵として頭に残すため、脳が記憶する情報量も少なく、桁数が大きくなっても対応できます。
そろばんの熟練者たちは頭の中でそろばんを打って暗算をしているため、電卓や筆記用具を使わずとも、速く正確な計算が可能です。
珠算式暗算は芸術脳といわれる右脳でそろばんの珠をイメージして計算します。そのため暗算が上達すればするほど右脳は活性化し、鍛えられます。
珠算式暗算コツ②指を空中で動かす
珠算式暗算で計算するときは、空中、あるいは机の上などで現実に指を動かし、そろばんを実際に弾く動きを行うと、より一層、そろばんがイメージしやすくなります。
珠算式暗算に慣れてくると、空中で指を動かさなくても、頭の中だけでそろばんを弾けるようになりますが、そろばん式暗算の初心者のうちは指をしっかり動かしながら、イメージのそろばんを使うのが、珠算式暗算での計算のコツ。
本物のそろばんは手元にありませんが、宙で指を動かすことにより、不思議と暗算の正確さも増すでしょう。
珠算式暗算コツ③正しい「運指」「運珠」をマスター
珠算式暗算を実践するときは「運指」「運珠」も、実際のそろばんを扱うときと同じように、正しい指使いで行います。
- 運指とは「珠を弾くときに使う指」
- 運珠とは「珠を弾く順番」
珠算式暗算を習得するためのコツは、正しい「運指」「運珠」が重要。「運指」「運珠」が正しくできているかできていないかで珠算式暗算の熟練度が大きく変わってきます。
頭の中でそろばんをするイメージが持てても、運珠や運指が毎回統一されていなければ、計算ミスに繋がります。正しい方法で指を動かし、珠をはじけば、珠算式暗算の正解率がアップし、計算スピードも速くなります。
珠算式暗算コツ④目を閉じて、読み上げ暗算
珠算式暗算(そろばん式暗算)の上達を目指すなら、読み上げ暗算で特訓するのも効果的です。読み上げ暗算を行うときは目を閉じておくと、視覚から入る情報をシャットアウトでき、集中力が増します。
「人間が情報収集をする際、約8割を視覚に頼る」とはよく言われる話。「視覚8割説」には、以下のような論文もあり「8割」の科学的根拠がしっかり判明しているわけでもなさそうですが、「目を閉じると集中力が増す」といった経験をお持ちの人も多いでしょう。
人の情報入力は視覚から8 割と“ いわれる”。
引用:「視覚は人間の情報入力の80%」説の来し方と行方
「暗算中に注意力散漫になる」「そろばんを頭の中でイメージできない」といった場合は、目をつぶって読み上げ暗算――を繰り返すのも、珠算式暗算上達への近道です。
読み上げ暗算はYoutubeにも動画がアップされていますので、練習に使うといいでしょう。
珠算式暗算コツ⑤ひたすら練習!
究極的な手法ではありますが、珠算式暗算(そろばん式暗算)は、繰り返し、ひたすら練習するのが上達のコツ。日々の練習でいかに体に染み込ませるかが大切です。
そろばん教室では、実際のそろばんを使った授業が多く、暗算の授業時間は短い場合があります。珠算式暗算を行うには、そろばんの基礎力が必須となるため、当然ながら、そろばんのマスターは珠算式暗算を身につける上で重要ではあります。
しかしながら、珠算式暗算は「そろばんをイメージする」「イメージしたそろばんを動かす」といった、特殊なコツも必須。そろばんを想像するトレーニングを積まないことには、珠算式暗算も上達していきません。
珠算式暗算を正確に身につけるためには日々の努力と練習時間が必要です。最初のうちは、少ない桁数からはじめ、2桁、3桁と、じょじょに難しい問題に挑戦してみましょう。
コツコツでも、毎日「頭の中のそろばん」をはじいていれば、暗算スピードも格段に上昇します。
より具体的な、珠算式暗算の練習方法については、次項で解説します。
珠算式暗算(そろばん式暗算)の練習方法と注意点
ある程度、珠算式暗算のコツをつかんだら、あとは練習あるのみ。
珠算式暗算は、暗算用の問題集や日常の中で見た数字(車のナンバーや、スーパーの商品値札など)を足したり引いたりするだけでも鍛えられますが、効率的に練習したい場合は「フラッシュ暗算」がおすすめです。
珠算式暗算の練習方法おすすめ:フラッシュ暗算
フラッシュ暗算の最中は、目で見た数字を瞬時に「画像」として認識し、頭の中のそろばん(珠算式暗算)で処理します。膨大な数字が瞬時に切り替わり、次々に映し出される数字を即座に計算していくため、暗算スピードの向上につながります。
フラッシュ暗算は練習すればするほど、筆算式暗算では処理しきれない「大きな桁数」に対応できるようになります。フラッシュ暗算の熟練者は、電卓で計算するよりも速く答えをはじきだします。
「フラッシュ暗算」は珠算式暗算の熟練度アップ練習法の中で最も有名といって過言ではありません。
最初のうちは、1桁・2桁の簡単な問題でもいっぱいいっぱいになるかもしれませんが、少しずつトレーニングするうちに珠算式暗算に磨きがかかり、筆算脳から珠算式暗算の脳に切り替わります。
珠算式暗算:練習時の注意点
珠算式暗算の練習をするときは、以下の2点に注意しましょう。上達がグンと早くなります。
筆算式暗算に切り替わらないよう注意
珠算式暗算は、頭にイメージしたそろばんで答えをはじき出します。しかしながら、計算が簡単すぎたり、頭にそろばんが浮かばないときは、筆算式暗算になりがちです。
珠算式暗算の練習では、答えが正しければOKではありません。「イメージのそろばんを使って、答えにたどりついた」という計算過程がとても重要です。
同じテキストの連用は避ける
珠算式暗算の練習時は、毎回違う問題集でトレーニングを行いましょう。暗算問題は短時間で解けてしまうので、繰り返し同じ問題を使っていると、問題そのものを無意識に覚えてしまいます。
日本珠算連盟の公式ホームページでは、検定試験問題の見本も公開されていますので、気分をかえて模擬試験問題で暗算に挑戦したい場合は、あわせてチェックしてみてください。
そろばんが頭に浮かばないときの対処法
珠算式暗算の練習をしたいけど「そろばんが頭に浮かばない」「そろばんがイメージできない」という理由で暗算を苦手とする声も多いです。
そろばんの思い浮かべ方には個人差があり「おでこのあたりに、そろばんが浮かぶ」という人もいれば「そろばんの珠ではなく、手の動きが浮かぶ」「数字を見ると自動でそろばんがイメージされる」といった声も。
イメージの仕方は人それぞれであるため、一概に「こうすれば、そろばんが頭に浮かぶ!」といったノウハウは断言しにくいですが、そろばんが頭に浮かぶようになった人の話では、以下のような手法が報告されています。
- 頭だけで計算せず、そろばんの指の動きをしてみたらイメージできた
- たくさん練習していたら、ある日突然、そろばんが思い浮かぶようになった
- 「エアそろばん」をする感覚で、見えないそろばん(透明なそろばん)を操作しているうちに、そろばんの珠が浮かぶようになった
- 長くそろばんを習っていたら、自然とできるようになった
そろばんを頭に思い浮かべる過程の参考にしてください。
【状況別】珠算式暗算(そろばん式暗算)のコツ
ここからは、珠算式暗算(そろばん式「暗算)を使った、具体的な計算のやり方について紹介します。暗算でつまづきそうなポイントをまとめました。
珠算式暗算 引き算のコツ
珠算式暗算の引き算は、実際のそろばんを使った引き算をマスターしていれば、滞りなく計算できるようになります。
引き算では、繰り下がりがつまづく要因になりがちです。下記の記事で、そろばん引き算のやり方について解説していますので、復習してみてください。
珠算式暗算 掛け算・割り算のコツ
珠算式暗算の掛け算は、九九がしっかり身についており、なおかつそろばんの珠をしっかり頭の中でイメージできれば、問題なく解けるでしょう。
割り算が難しいと感じた場合は、1桁計算できたらその時点で答えを書いてしまうのもおすすめ。
掛け算・割り算の基本をマスターしておけば、暗算もスムーズです。掛け算・割り算の計算方法については以下の記事で解説しています。あわせて参考にしてください。
みとり暗算のコツ
みとり暗算でつまづいたときは「2桁ずつ」計算してみましょう。まず、問題をざっと眺めてから、1の位と10の位のみを全て足し、答えを下二桁だけ答案用紙に書き込みます。その後、100の位を足し、答えをすべて出します。
途中で引き算が混じったら、そこだけ後回し。暗算の最後に、まとめて引き算します。2桁の珠算式暗算に慣れたら、3桁の暗算にも挑戦してみましょう。
暗算1級、暗算2級のコツは?
暗算2級、暗算1級の検定試験では、桁数が多く試験時間が足りなくなる、割り戻し(還元算)が出てきて混乱する、とにかく見取り算が大変――など、難易度が高くなるため、なかなか合格基準点に届かず大変な思いをしている人も多いです。
暗算1級・暗算2級を突破するには、大前提として珠算式暗算(そろばん式暗算)で回答を出さないと、合格は難しいでしょう。頭の中で筆算しているうちは、試験時間がタイムアップになり、正解率も下がってしまいます。
珠算式暗算を使って、少しずつ計算する桁数を増やす、ときには5桁×6桁などを暗算してから4桁の問題に戻るなどすると、元の検定試験問題を暗算する際にラクに感じる場合もあります。
最終的には練習あるのみですが、暗算練習するときは必ず「頭のそろばん」で計算するようにしましょう。
珠算式暗算(そろばん式暗算)Q&A
珠算式暗算(そろばん式暗算)について、よくある質問をまとめます。
珠算式暗算はいつからはじめる?
珠算式暗算の基礎となるのは、実際のそろばんです。よって、珠算式暗算は、そろばんの基礎ができるようになってから学習をはじめるのがおすすめです。
珠算式暗算は大人でもできるようになる?
珠算式暗算は、そろばんを学べば大人でもできます。大人だからといって諦める必要はありません。
珠算式暗算をマスターすれば、買い物時や、仕事で簡単な計算をするときに役立ちます。暗算1級レベルになると、5桁を暗算できるようになります。ぜひ、この機会にそろばんを手にしてみましょう。
珠算式暗算は独学でもマスターできる?
珠算式暗算は、独学よりもそろばん教室で正式な手法を学んだほうが上達が早いです。
独学では100%無理、というわけではありませんが、珠算式暗算はそろばんの「運指」や「運珠」が基礎となるため、独学の場合は間違った指の動き・珠の動きをしないよう、慎重に勉強する必要があります。
そろばん教室では、自然と珠算式暗算を覚えるように授業が進みます。そろばん教室では、基本テキストに沿ってそろばんを学ぶため、珠算式暗算を覚えるためのステップとして必要な「運指」や「運珠」は必然と身に付きます。
そろばん教室で習うなら、そこまで珠算式暗算を意識しなくても、そろばんが頭にイメージできるようになりますが、独学で間違いに気づかずそろばんを続けた場合は、後々に計算ミスやそろばんをイメージができない恐れもあるためご注意ください。
珠算式暗算は脳トレになるって本当?
珠算式暗算は右脳を刺激するため、脳トレにも最適です。珠算式暗算とは右脳を使って頭の中で「そろばんの盤」の画像を脳内に映し出し、珠を動かす計算手法。
右脳は「音楽、空間、感覚、感情」を、左脳は「論理、数字、言語」を考える力があります。学習能力を向上させるには、右脳と左脳をバランスよく鍛えることが大切です。
しかしながら、学校などの教育機関や日常生活では、左脳を使う機会が多いのが現状。右脳と左脳の使用頻度に偏りが起こる毎日にそろばん学習を取り入れることで、右脳を鍛える効果に期待が持てます。
そろばんは計算時に数字を取り扱うので、左脳が働いているように感じますが、「珠算式暗算」は右脳を活性化させる働きを持つと証明されています。
河野貴美子先生(日本医科大学)の研究発表で、有段者の珠算式アンザンは右脳を使用していることが判りました。
引用:そろばんの効用|日本珠算連盟
暗算検定試験について
珠算式暗算の検定種目は、そろばんの基本種目と同じく、見取り算、掛け算、割り算が出題されます。
- みとり暗算(足し算と引き算)
- かけ暗算
- わり暗算
日本珠算連盟(日珠連)の暗算検定では、暗算10級~暗算1級までの段位があり、試験時間12分、満点500点。桁数・口数は受験する級によって異なります。
珠算式暗算(そろばん式暗算)まとめ
この記事では、珠算式暗算(そろばん式暗算)についてご紹介しました。
「頭の中でイメージしたそろばん」で計算し、答えを出す珠算式暗算を覚えれば、いつでもどこでもパパッと計算できて便利です。珠算式暗算の練習は、フラッシュ暗算を取り入れると効果的に習得できます。
最近は、スマホで学べるフラッシュ暗算アプリ(無料)も簡単に手に入るようになりました。そろばん式暗算の練習をしたい場合は、あわせて参考にしてください。
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