そろばんの割り算のやり方を紹介します。割り算は、九九と引き算を使って計算します。引き算も使うため、苦手意識が強い人も多い傾向。珠算検定6級や3級では割り算や小数点の問題や、戻し算(還元)でつまずきやすいとも言われています。
「割り算が苦手」「割り算できない」といった苦手意識を、この記事で克服しましょう。
そろばんの割り算の考え方 苦手な人向け
そろばんの割り算は、九九と引き算が必須です。掛け算が九九+足し算だったのに対し、割り算は九九+引き算が基本的な考え方になります。
- 掛け算→九九と足し算を使う
- 割り算→九九と引き算を使う
そろばんの割り算は、引き算の連続です。よって、そろばんを使った引き算が苦手な場合、割り算も苦手になってしまいます。
ですので、割り算のやり方を理解する学習の前に、まずは引き算をしっかりとマスターしておきましょう。
そろばん割り算「位取り」のやり方
次は、そろばん割り算の「位取り」について解説します。
そろばん割り算の「位取り」とは
位取りとは答え(商)の一の位を特定する方法です。
位取りとは、そろばん上の答えの“一の位の場所”を特定することです。
そろばんで掛け算・割り算の計算をする場合、答えの「一の位」がもともとの定位点からズレるため、一の位をしっかり定めないと、桁数を読み間違えてしまう恐れがあります。
例えば正解は3,230なのに位取りを間違えて323としてしまう、など。これでは、せっかく計算が合っていても正解にはなりません。そろばんの掛け算、割り算や小数点の問題を解くときは「位取り」を丁寧に行いましょう。
位取りの重要性
位取りを正確にできるようになると割り算の正解率を大きく上げることができます。繰り返しになりますが、位取りは答え(商)の一の位の位置を特定する方法です。
計算する桁数によって商の置き始めの位置は変わってきますので、混乱しないように注意しましょう。
「計算するのが遅い…」「時間を掛けないと答えが出ない…」という方、焦らずにゆっくりと練習していきましょう。
「位取り」は、整数の問題と小数点の問題でのやり方が変わってきます。順に解説していきます。
そろばん割り算の位取り:割る数が「整数」の場合
そろばん割り算の位取りで、割る数が「整数」の場合は、もともとの一の位から、割る数の桁数に1を足した位置(左へ移動)を、位取り(答えとなる一の位の場所)とします。
文字だけだと分かりにくいので、画像付きで例題をチェックしてみましょう。
※掛け算は右へ右へとそろばんの珠を置いていきますが、割り算は左へ珠を置いていきます。
例題:12÷4(整数の問題)
12÷4の割り算を、そろばんで計算してみます。まず割られる数12をそろばんの中央の定位点に置きます。
画像参照:無料そろばんゲーム
次に割る数の桁を確認します。割る数「4」は1桁。割る数が整数の場合の位取りルールは「割られる数の一の位から割る数の桁数+1桁左へ移動した位置が整数の問題の位取り」です。
この場合だと、割る数「4(1桁)」に+1をした、1桁+1=2つぶん左が、答えの一の位になります。
位取りした位置は忘れないよう、左手の人差し指で位置を指しておきましょう。計算が終わるまで、この指はそろばんから離さないでください。
位取りができたら、次は計算をします。
12÷4は3が答えになります。位取りした位置に3を置き、12を払います。
これで計算は終了です。
桁数が大きくなってくると位取りをした位置に割られる数が置かれている場合があります。その場合はさらに1桁左へ移動した位置から商を置いてください。この時、位取りした位置は変えないでください。
そろばん割り算の位取り:割る数が「小数」の場合
次は小数点の問題です。割る数が小数点の場合、その小数が1以上なのか1未満なのかで位取りの方法が変わってきます。
- 〇〇÷1.1→整数と同じ計算方法
- 〇〇÷11.1→整数と同じ計算方法
- 〇〇÷0.1.23→左に1桁
- 〇〇÷0.0123→そのままの位置(=割られる数の定位点)
「1以上の小数」の位取り
割る数が小数点「1以上」の問題は、割る数が整数のときとやり方は同じです。(例:〇〇÷1.1 〇〇÷33.4 など)このとき、小数点以下は無視します。
【例題】
- ○○÷1.234の割る数は1.234、1.234は1以上の小数1桁なので+1して左に2桁で位取り
- ○○÷12.34の割る数は12.34、12.34は1以上の小数2桁なので+1して左に3桁で位取り
- ○○÷123.4の割る数は123.4、123.4は1以上の小数3桁なので+1して左に4桁で位取り
「1未満の小数」の位取り
割る数の小数が「1未満」の場合、小数点以下の0の位置によって位取りが変わってきます。
- ○○÷0.1.23なら左に1桁
- ○○÷0.0123ならそのままの位置(=割られる数の定位点)
小数点第一位に0がある場合と、小数点第一位になんらかの数字がある場合とでは位取りのやり方が変わります。
そろばん割り算の問題の種類は2種類
そろばんの割り算の問題は、2種類あります。ひとつは割り切れる割り算、もうひとつは割り切れない割り算(あまりが発生する割り算)です。
問題の種類【割り切れる割り算】
珠算検定4級までの割り算は割り切れるようになっています。割り切れる割り算は、割り算の中でも最もシンプルな問題です。割り切れる=答えが合っている可能性が高いです。
問題の種類【割り切れない割り算】
割り切れない割り算は、計算の途中までは割り切れる割り算と同じです。
割り切れないので「ここまでしか計算できない=これは割り切れないな」と出来るだけ早く分かるようになることが大切です。
割り切れない割り算の場合は、計算した時点では答えが合っているかどうか分かりません。
4級以下のわり算は必ず割り切れます。つまり、割り切れた=答えがあっている可能性が高い、という事になります。
そろばん割り算のやり方の種類
そろばんの割り算には、3つのやり方があります。
具体的な違いは「割る数を置くか置かないか?」です。
そろばん割り算「片落とし」
そろばん割り算の「片落とし」は、割られる数のみをそろばんに置き、計算するやり方です。片落としでは、そろばんの中央から右側、定位点に割られる数を置きます。
片落とし…掛けられる数をそろばんにおき、その1の位から掛ける数を掛けていく。
そろばん上に割る数を置かないので両おきに比べ早く計算できますが、頭の中に割る数をイメージしながら計算するので間違えやすく慣れるまでは難しく感じます。
とはいえ、慣れてしまえばとても簡単なのでしっかりと練習していきましょう。そろばん教室では、片落としで割り算を教えるケースが多いです。
- 片落としのメリット…割る数を置かないので計算するスピードが上がる
- 片落としのデメリット…両おきに比べ、頭の中で割る数を意識しなければいけないので間違えやすくなる
そろばん割り算「両おき」
そろばん割り算の「両おき」は、割られる数と割る数の両方を、そろばんに置いて計算するやり方です。
そろばんの中央から右側に割られる数を置き、少し間をあけて左側に割る数を置きます。割られる数と割る数はそれぞれ定位点に置くようにしましょう。
割られる数も割る数も、そろばん上で確認できるため、一目で計算過程が分かり、視覚的に問題を把握しやすいのが特徴。反対に、計算に時間がかかる、桁数が増えると対処できなくなるなどのデメリットもあります。
- 両おきのメリット…間違えにくく、答えを導きやすい
- 両おきのデメリット…計算スピードが落ちる
そろばん割り算「両落とし」
そろばん割り算の両落としは、割られる数と割る数の両方をそろばんに置かずに計算を進めるやり方です。かなり難易度が高いため、割り算に慣れないうちの両落としはあまりおすすめできません。
桁数が少ないうちは問題ありませんが、珠算検定の級数が上がると桁数が増えて、対応できなくなります。片落としの場合は、割る数を省略するだけですが、両落としの場合割られる数も省略することになります。
割られる数、割る数どちらも頭の中にイメージしながら計算するのは簡単ではありません。ただ「割り算を早く解けるようになりたい」という場合は、小さな桁数から挑戦してみるとよいでしょう。
- 両落としのメリット…慣れると計算スピードが上がり、暗算に有利
- 両落としのデメリット…割る数、割られる数を両方、頭でイメージするため、難しい
そろばん割り算「定位法」
そろばんの割り算では、答え(商)の1桁目が必ず定位点にくるように珠を置く「定位法」があります。定位法では、割る数の桁数によって、割られる数の置き場所を変えます。
参考動画:3級わりざん 定位法(かじつそろばん教室)
そろばん割り算・還元算のやり方
そろばんの割り算「戻し算(還元)」のやり方を紹介します。
通常、そろばんの割り算では割られる数に対して商(答えになる数)を置いていきます。しかしながら、正しい商より大きな数を置いてしまった場合、割られる数から引き算が出来なくなります。
割り算は引き算の連続なので、問題によっては計算できなくなる場合があります。「これ以上、引けない!」というときに使用するのが「戻し算」。戻し算は、一度立てた商を引いていきながら正しい商を探す解き方です。
戻し算は、珠を動かす手数が増えるため、間違えやすく計算に時間も多くかかります。級数が上がるほど戻し算を行う時間はロスになります。
よって、戻し算を習得したとしても結局は省略することになるでしょう。ですので初めから戻し算を使わずに割り算ができるようになった方が効率的といえます。
そろばん割り算の例題
ここからは、そろばんの割り算の例題を用いて、計算工程解説していきます。割り算は全て片落としで行います。合わせて割り算の位取りのやり方も解説します。
- 1桁÷1桁の割り算例題…6÷3
- 2桁÷1桁の割り算例題…18÷2
- 4桁÷2桁の割り算例題…4,116÷42
- 3桁÷2桁の割り算例題…940÷47
- 5桁÷3桁の割り算例題…27,272÷974
- 6桁÷3桁の割り算例題…369,837÷377
- 割り切れない割り算(余りある割り算)例題…862÷15
・1桁÷1桁の割り算例題…6÷3
【問題】6÷3=?
- まずそろばんの適当な定位点に割られる数6を置きます。
- 位取りは、割る数が3で1桁なので1桁+1桁で定位点から左に2桁の位置を指します。
- 6÷3は2×3=6なので、位取りをしている桁に2を置いて6を払って終了です。
- 答えは2になります。
・2桁÷1桁の割り算例題…18÷2
【問題】18÷2=?
- 定位点に18を置きます。
- 位取りは、割る数が2で1桁なので1桁+1桁で定位点から左に2桁の位置を指します。
- 18÷2は2×9=18なので、位取りをしている桁に9を置いて18を払って終了です。
- 答えは9になります。
【図解①定位点に18を置く】※赤い星印が、位取りした桁
【図解②位取りした桁に9を置く】
【図解③18を払い、答えは9】
・4桁÷2桁の割り算例題…4,116÷42
【問題】4,116÷42=?
- 定位点に4,116を置きます。
- 位取りは、割る数が42で2桁なので2桁+1桁で定位点から左に3桁の位置を指します。
(桁数が大きくなると今回のように、位取りした位置に割られる数が置かれている場合があります) - さらに1桁左へ移動した位置から商を置いてください。
※この時、位取りした位置は変えないでください。 - 4,116÷42ですが、まず41÷42は出来ません。なので411÷42で考えます。考えられる最大の商は9です。
- 9×42=378なので、411-378で引き算をします。
- そろばん上で割られる数が336になりました。
- 次は336÷42を考えます。
- 42×8=336で割り切れるので9を置いた桁の右隣=位取りした位置に8を置いて336を払います。
- 答えは98になります。
・3桁÷2桁の割り算例題…940÷47
【問題】940÷47=?
- 定位点に940を置きます。
- 位取りは、割る数が47で2桁なので2桁+1桁で定位点から左に3桁の位置を指します。
- 94÷47で考えます。
- 47×2=94なので2を置きます。
- 94をそろばんから払います。
- 位取りをした位置が答えの一の位になるので、答えは20になります。
<6級わり算 参考動画>
・5桁÷3桁の割り算例題…27,272÷974
【問題】27,272÷974=?
- 定位点に27,272を置きます。
- 位取りは、割る数が974で3桁なので3桁+1桁で定位点から左に4桁の位置を指します。
- 974で割りたいので27,272の2,727でまず考えます。
- 考えられる最大の商が2なので、2を置いて2×974=1,948なので2,727-1,948を引きます。
- 7,792が割られる数としてそろばん上に残ります。
- 7,792÷974は8です。定位点から読み取って答えは28になります。
・6桁÷3桁の割り算例題…369,837÷377
【問題】369,837÷377=?
- 定位点に369,837を置きます。
- 位取りは、割る数は377で3桁なので3桁+1桁で定位点から左に4桁の位置を指します。
- 377で割りたいのですが、369では足りないので3,698で考えます。
- 3,698÷377で考えられる最大の商は9なので、9×377=3,393です。
- 3,698から3,393を引くと、割られる数が30,537としてそろばん上に残ります。
- 30,537÷377は割られる数が大きすぎるので、3,053÷377で考えます。この場合で考えられる最大の商は8です。
- 8×377=3,016になり、3,053から3,016を引くと、割られる数が377残ります。
- 377÷377=1になります。これで計算は全て終了です。
- 定位点から答えを読み取ると答えは981になります。
・割り切れない割り算(余りある割り算)例題…862÷15
【問題】862÷15=?
- 定位点に862を置きます。
- 位取りは、割る数は15で2桁なので2桁+1桁で定位点から左に3桁の位置を指します。
- 86÷15でまず考えてみます。
- 商は5になり、5×15=75になり86-75は11になります。
- 次の計算は112÷15になります。この問題は割り切れません。
- 112÷15で考えられる最大の商は7になるので、7×15=105になり112-105=7です。
- ここまで計算すると、位取りした位置に商の7があります。
- これ以上の計算は不要です。位取りから読み取ると57で余りは7が答えになります。
まとめ
今回は、そろばんの割り算をご紹介しました。
割り算は、なかなかイメージしづらいのと、小数点の問題、足し算よりも慣れていない、引き算を続けて行う必要があるため、人によっては苦手意識が強く出やすい傾向があります。
この記事では、片落としのやり方で割り算の練習問題を解いてみましたが、割り算に慣れていない場合には、両おきからスタートするのもおすすめです。
最後に。そろばんは、練習問題を繰り返して初めて習得できる習い事です。ひたすら正しい練習方法で学習し、そろばん割り算の習得を目指しましょう!
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