伝統的・また日本での習い事としても有名な「そろばん」は、兵庫県の「播州そろばん」・島根県の「雲州そろばん」です。
この記事では、播州そろばんと雲州そろばんの違いを様々な観点から分かりやすくまとめています。それぞれのそろばんを製作体験できる施設も合わせて紹介しているので、ぜひ体験してみてください。
播州そろばんと雲州そろばんの違い【基本編】
かつては日本各地でそろばんが製作されていました。しかし今現在では、兵庫県・島根県これら2つの県のみで製作されており、そろばんの2大産地とも言われています。
- 播州そろばん・・兵庫県小野市で製作
- 雲州そろばん・・島根県仁多郡奥出雲町で製作
大きな違いは、産地が異なる点です。作られている場所はもちろんですが、当時は用途も異なっていたんですよ。それぞれどのようなそろばんか、もう少し詳しく解説します。
播州そろばん
引用:伝統的工芸品 播州そろばん | 株式会社DAIICHI(ダイイチ)
播州そろばんは、兵庫県を代表する伝統工芸品の一つです。兵庫県南東部に位置する、小野市や加古川市・三木市・河西市・加東市などで作られています。
1976年に当時の通商産業省(現:経済産業省)から伝統工芸品に指定されて、2007年には地域団体商標にも登録されました。
播州そろばん(ばんしゅうそろばん)とは、兵庫県小野市を中心とした地域で製造されているそろばんであり、兵庫県の伝統工芸品であり、そのブランドである。1976年に通商産業省(現・経済産業省)伝統的工芸品に指定され[1]、2007年(平成19年)8月に特許庁の地域団体商標に登録された。
雲州そろばん
引用:雲州そろばんの製作から販売まで|雲州そろばん 協業組合
雲州そろばんは島根県ふるさと伝統工芸品であり、昭和60年に国の伝統的工芸品に指定されました。
堅牢で使い易く全国に知られている雲州そろばんは、昭和60年、国の伝統的工芸品に指定されている。
タイでも盛んに珠算が行われているのは、今の奥出雲町からタイにそろばんの講師の派遣をきっかけとしてスタートしたことがきっかけです。このように、日本のそろばんをどんどん広めようとする活動も行なっています。
播州そろばんと雲州そろばんの違い【歴史編】
播州そろばんと雲州そろばんの違いを、歴史で比べてみましょう。
播州そろばん
引用:兵庫県/そろばん
豊臣秀吉が三木城を攻略した安土桃山時代に、大津に逃れた民がそこでそろばんの技術を習得しました。長崎から大津へとそろばん製法が伝わって、(大津では)そろばん作りが盛んだっためです。
その後帰郷してそろばん作りを始めたのが、播州そろばんが始まったきっかけと言われています。
そろばんは室町時代の終り頃、中国から長崎を経由して大津に伝わりました。安土桃山時代に、豊臣秀吉の三木城攻略時に、大津に逃れた住民が、そろばんの技法を習得し、地元に帰って製造を始めたのが播州そろばんの始まりと言われています。昭和35年には360万丁と最も多く生産されました。
雲州そろばん
1832年(江戸時代後期)に、村上吉五郎が広島西部のそろばんを参考にしながら作り始めたのがきっかけと言われています。
最初はそろばんの玉を、梅の木の芯で作っていたようです。今ではツゲ・カバ・黒檀等なので、まったく異なりますね。
江戸時代後期の1832年、島根県仁多(にた)町の大工職・村上吉五郎が、広島のそろばんを参考に地元でとれる樫(かし)、梅、煤竹(すすたけ)を用いて作成したのがきっかけです。
播州そろばんと雲州そろばんの違い【特徴編】
播州そろばんと雲州そろばんは、それぞれで始まった時期もきっかけも異なることが分かりました。この章では、特徴を比較してみます。
播州そろばん
播州そろばんの特徴は、なんといっても製作工程にあります。
1人の職人がすべて作っているわけでは無く、部品ごとに細かく作業工程を分けています。部品ごとで分業化されているため、たくさんの職人によって1つのそろばんが完成しているわけです。
玉の見た目の美しさだけでなく、大きさや穴など細かなところまですべて均一に揃っています。吟味した材料を使いながら、職人一人一人の高い木工技術により伝統工芸品にふさわしい”播州そろばん”を作り上げています。
職人の玉を削る技は、玉の大きさの均一さや玉穴の正確さなど、高い木工技術を誇ります。
使いやすさや玉はじきの良さに加え、見た目もとても美しいのが特徴で、木の美術品としての価値も備えた逸品です。
現在も吟味した材料を用い、高度の伝統技術を受け継ぐ伝統工芸士をはじめとした職人が、一つ一つ丁寧に作り上げています。
雲州そろばん
雲州そろばんは、播州そろばんのように工程ごとに職人がいて製作しているのではありません。ほとんど一人の職人の手作業で作っています。なんと全187の工程を、です。そろばん一つ一つに、職人も刻まれるほどです。
雲州そろばんの製造は、実に187工程にのぼります。ほとんどをひとりの職人が手作業でつくるため、一丁一丁に職人の名が刻まれているのも特徴。
また雲州そろばんは、特にそろばんの命でもある「玉」の仕上がりに力を入れています。玉だけでも、約7つの工程があるほど。
播州そろばん同様に、玉の形はもちろん穴まですべて同じ大きさで揃っていることから『質の雲州そろばん』と言われるまでになりました。
播州そろばんと雲州そろばんの違い【工程編】
播州そろばんと雲州そろばんは、前述したように工程も全く違います。どのような工程を経て作られるのでしょうか。
播州そろばん
播州そろばんは、以下のような工程で製作されています。
- 枠材を作る・・黒檀や積層強化材を細かく裁断して、枠の各部分に合わせた板に加工
- 珠を作る・・珠に使用する木材を、そろばんの珠の形へと削り込んでいく作業
- 軸(ひご)を作る・・主に真竹が使用。小さく割り丸く加工して、軸を作る作業
- 枠の加工・・そろばんの枠に、竹の軸を通すための穴を開ける作業
- 軸の差し込みと珠入れ・・4.で開けた穴に軸を差し込んで、軸に珠を入れる作業
- 組み立てる・・枠や裏板・裏棒などを順に取り付けて、組み立てる作業
- 目竹どめ・裏棒どめ・すみどめの穴あけ・・丈夫なそろばんにするためにそれぞれ穴を開けて、アルミニウムの針金を刺してはさみで切る作業
- 磨く・・手でつかむ枠の部分を、やすりで丹念に磨いて仕上げる作業
こちらのサイトで、それぞれの工程の写真が確認できるのでぜひ見てみてください。
雲州そろばん
雲州そろばんの工程は、大きく分類すると下記の通りです。
- 珠を作る・・そろばんの珠にふさわしい材質の木を輪切りにし、その後そろばんの珠になるように一つ一つを削っていく作業
- 軸を作る・・真竹をそろばんのサイズに合わせて切断し、作る作業
- 枠を作る・・黒檀や積層強化材を細かく裁断して、枠の各部分に合わせた板に加工
- 中棧(なかさん)を作る・・枠に軸を通すための穴を開けて、両面を削る作業
- 上下枠・・上下の枠にも穴を開け、表面をきれいに削る作業。
5.では播州そろばんと同じように、アルミニウムの針金を刺してはさみで切る・枠をやすりで磨く作業も含まれています。
玉と桁は製造していないので、播州から供給している!
雲州そろばんは、材料を播州から供給しているようです。有名な雲州そろばんですが、組み立て以外の職人が断絶しているとは驚きでした。
もう一つのそろばん産地である島根の「雲州そろばん」に関しては、すでに「組み立て」以外の職人が断絶しており、材料を播州から供給している状態なんだそう。
播州そろばんを製作体験・見学できる場所
播州そろばんの製作体験や見学できる場所を紹介します。
職人が丁寧に作ったそろばんももちろん素晴らしいですが、自分で作ったそろばんだとより愛着が沸きますよ。
①そろばんビレッジ|オリジナルそろばん製作所
ホームページ | そろばんビレッジ|オリジナルそろばん製作所 |
住所 | 兵庫県小野市垂井町644-5 |
電話番号 | (TEL)0794-63-7089(FAX)0794-62-3530 |
営業日 | 月・水・木・金・土・日・祝日 |
営業時間 | (平日)11:00~17:00・(土日祝)10:00~18:00 |
定休日 | 毎週火曜日 |
予算 | 9桁そろばん:1,800円~ |
所要時間 | 1時間ほど |
駐車場 | 店前に3台分あり |
そろばんビレッジ|オリジナルそろばん製作所について
小野市にあるそろばんビレッジ・オリジナルそろばん製作所では、9桁からのそろばんを作ることができます。玉は11種類、上下の枠・中板・ツマも各5色あって自由に組み合わせOK!世界に一つ、まさに自分だけのオリジナルそろばんが完成します。
9桁以外にも12桁・15桁のそろばんを製作可能、それぞれ1,800円・2,300円・2,800円とリーズナブルです。他にもそろばん珠を使った時計(4,000円~)や、百玉そろばん(3,000円)・木のホルダー(800円)など色々なものの製作体験ができますよ。
平日は必ず1日前までの予約が必須・土日祝は予約している人が優先されるので、電話して予約して訪問する方がおすすめです。
②小野市伝統産業会館
ホームページ | 館内見学|小野市伝統産業会館 |
住所 | 兵庫県小野市王子町806-1 |
電話番号 | (TEL)0794-62-3121(FAX)0794-62-9258(9:00~17:00) |
営業日 | 月~日 |
営業時間 | 9:00~16:00(最終受付) |
休館日 | 年末年始(12/28~1/4) |
料金 | 無料 |
所要時間 | 30分程度 |
駐車場 | あり |
小野市伝統産業会館について
小野市伝統産業会館では展示品の見学・小野市の特産品を紹介するビデオ上映の他に、木珠削りの実演や職人によるそろばんの組み立て実演を観ることができます。
年末年始以外はすべて9時から16時まで営業しており、いずれも予約は不要なので、訪れやすいですね(ただし組み立て実演は、団体15名以上で予約必須)。駐車場もあるので、遠方からの車での来訪時も安心です。
雲州そろばんを製作体験・見学できる場所
以下の2つは、雲州そろばんを製作体験・見学できる施設です。雲州そろばんに興味がある人は、ぜひ足を運んでみてくださいね。
①そろばん作り体験|奥出雲町観光協会
ホームページ | そろばん作り体験|奥出雲町観光協会 |
住所 | 島根県仁多郡奥出雲町下横田76-5 |
電話番号 | (TEL)0854-54-2260 |
営業日 | 月・火・水・木・金(平日) |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 土日祝、年末年始 |
予算 | 2,200円 |
所要時間 | 約60分 |
駐車場 | あり |
そろばん作り体験について
そろばん作り体験🙋💓
奥出雲町 そろばんと工芸の館で体験できますよ♪ pic.twitter.com/Be1IKOvklT— うんなんエリア観光情報 (@unnankouiki) November 4, 2016
奥出雲町観光協会では、雲州そろばんを作るのと同じ工程で13桁のミニマイそろばんを製作できます。定員は1~5名と少人数なので、初めてそろばんを作るという人でも安心です。
土日祝・年末年始が定休日で、平日のみ営業している点に注意してください。どの曜日も10時から16時まで、所要時間は1時間程度です。
職人さんの思いを聞きながら、ぜひ自分だけのマイそろばんを作ってみませんか。費用も、2,200円とリーズナブルで済みます。
②雲州そろばん伝統産業会館(そろばん資料館)|しまね観光ナビ
ホームページ | 雲州そろばん伝統産業会館(そろばん資料館)|しまね観光ナビ |
住所 | 島根県仁多郡奥出雲町横田992-2 |
電話番号 | (TEL)0854-52-0369 |
営業日 | 火・水・木・金・土・日 |
営業時間 | 10:00~16:00 |
定休日 | 毎週月曜日(祝日なら翌日)、12/28~1/4 |
予算 | 一般:310円、高校・大学生:210円、小中学生:150円 |
所要時間 | 約60分 |
駐車場 | 10台分あり(無料) |
雲州そろばん伝統産業会館(そろばん資料館)について
雲州そろばん伝統産業会館(そろばん資料館)は、そろばんの歴史の他に伝統技術や工具・そろばん職人の仕事場、世界のそろばんなど貴重な展示品が見学、また映像で確認することができる施設です。
一般は310円・子どもは150円と格安、1時間もあれば施設内を見て回れます。毎週月曜日が定休日で、火曜から日曜まで週6日間オープンしているので行きやすいですよ。
駐車場もあるので車での来訪も可能ですし、JR木次線出雲横田駅の東隣に位置するので電車でも便利です。
播州そろばんと雲州そろばんの違い:まとめ
播州そろばんと雲州そろばんの違いを、
- 基本編
- 歴史編
- 特徴編
- 工程編
に分けて解説しました。同じそろばんでも、少しずつ違っているのが面白いですよね。
日本のそろばん2大産地であるこれらのそろばんの製作体験や見学を通して、よりそろばんに興味を持っていただければと思います。
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