そろばん掛け算のやり方について解説します。
両おき・両落とし・片落としを使った具体的な計算方法や、位取り、小数点の解き方を例題・練習問題を交えて紹介していきます。
そろばんの掛け算は、足し算、引き算よりも難しいように思われがちですが(実際そうです)、きちんとやり方さえ覚えてしまえば、スイスイと問題を解くことが可能。
この記事で、そろばん掛け算の基本やコツを学びましょう。

そろばん掛け算のやり方(前準備)
そろばんの掛け算のやり方を学ぶ前に、覚えておきたいのは「九九」と「実・法(掛ける数、掛けられる数)」です。
九九を覚えておく
そろばんで掛け算をするには、まず第一に九九をマスターする必要があります。
そろばんの掛け算は、日珠連9級、全珠連も9級から検定問題に登場します。そろばん教室に通う、就学前の子どもが九九をマスターしているのは、そろばんの掛け算・割り算で九九が必須だからです。
練習のときは九九の表を見ながら掛け算しても良いのですが、珠算検定では九九の表を使用できません。また、九九の表を見ながら計算するのはとても時間がかかるので、なるべく早めに九九は覚えてしまいましょう。
実・法(掛ける数、掛けられる数)
そろばんの掛け算では、掛けられる数を「実(ジツ)」と呼び、掛ける数を「法(ホウ)」と言います。

例:12×34
12×34の計算式の場合、12が掛けられる数(実)で34が掛ける数(法)になります。
「実と法」あるいは「掛ける数と掛けられる数」がどちらにあたるか? を理解しておくことで、そろばん掛け算の理解がよりスムーズになるでしょう。
※当記事内では分かりやすいように、なるべく「掛けられる数・掛ける数」という言葉で解説します。
そろばん掛け算|位取り

そろばん掛け算の位取りとは、そろばん上での一の位の場所を特定するやり方のこと。
掛ける数=右に移動する桁数=位取りの位置と覚えましょう。
そろばんで掛け算を計算していくと、一の位の位置がズレてしまいます。一の位を特定しておかないと、本来の正解は「340」なのに、「34」と答えてしまう恐れがあります。
こうしたミスは、一の位に珠が置かれていない場合(一の位がゼロのとき)に起こりやすいです。桁数が増えればなおさら間違いは増えます。
正しく計算が出来ていたとしても桁数を見誤って間違いになってしまったらガッカリですよね。単純な計算だと暗算でも解けますが、桁数が多くなればなるほど位取りは重要になってきます。
慣れてしまえばなにも考えずに位取りできるようになります。ただ、最初のうちは位取りした場所をしっかりと確認する、位取りした指を動かさないようにする、この2つを心がけて練習してみましょう。
位取りのイメージをつかむために、お試し例題を用意しました。
【位取りの例題①】:片落とし 83×2の2桁×1桁
片落とし、83×2の計算を例題として解いていきます。掛ける数「2」は1桁です。
元の位置から右に1桁移動した桁が、答えの一の位(位取りの場所)になります。「元の位置」というのは、掛けられる数83を定位点に置いた時の、一の位を指しています。
掛け算は右にズレて計算していくので、新しい一の位の桁も右に移動していきます。
【位取りの例題②】:片落とし 59×263の2桁×3桁
片落とし、59×263の2桁×3桁の計算であれば、掛ける数「263」は3桁です。
先ほどと同じやり方で計算すると、元の位置から右に3桁移動した桁が、答えの一の位(位取りの場所)になります。(答えは15,517になります)
位取りのポイント、指を置く位置
そろばん掛け算をするときは、計算を始める前に位取りをします。特定した一の位には左手の人差し指を置いておきましょう。左手の人差し指は計算が終わるまで動かさないでください。
人差し指を置く位置は、位取りした位置です。元の位置ではありません。(位取りの元の位置というのは、掛けられる数を定位点に置いた時の一の位の場所です)
位取りは答えの一の位を確定させる掛け算のやり方です。掛け算の計算途中で混乱してしまうこともあるかと思いますが「位取りの役割は、一の位を特定すること」とはっきりと認識しておきましょう。
位取りは整数の計算はもちろん、小数点の計算でも非常に大切なポイントになってきます。
そろばん掛け算【両おき・両落とし・片落とし】やり方比較
そろばんの掛け算には、両おき、片落とし、両落とし、3種類の解き方があります。両おきも、片落としも、両落としも、計算のやり方は同じです。違いは珠の置き方です。
両おき、両落とし、片落としの特徴を簡単にまとめると、
- 両おき→掛けられる数、掛ける数の両方をそろばんに置いて計算する
- 片落とし→掛けられる数のみをそろばんに置いて計算する
- 両落とし→掛けられる数、掛ける数、両方ともそろばんに置かずに計算する
以下で、詳しく解説します。
そろばん掛け算:両おきのやり方と例題
両おき(普通乗法)は、掛けられる数、掛ける数、両方ともそろばんに置いて計算する掛け算の方法を指します。
例えば34×4であれば、そろばんの左側と右側にそれぞれ「34」と「4」を置いてしまうので、目線の移動が少なく、パッと一目で計算過程が分かりやすいのが特徴的。
珠算検定の何級からでも使えます。簡単なので初心者向けの計算方法ですが、掛けられる数と掛ける数、どちらの数もそろばんに置くため、計算に時間がかかるのがネック。
また、桁数が多くなると、そろばんに置ききれず対応出来なくなるのがデメリットです。
(1)両置き
・789をそろばんの左側、245をそろばんの右側におく(左右は逆の場合もあり)
両おきのやり方例題:56(掛けられる数)×78(掛ける数)
2桁×2桁の例題で、そろばん掛け算「両おき」の解説していきます。
例題:56×78=?
- 掛けられる数の56を、そろばんの左側の適当な定位点に置きます。
- 掛ける数の78は、そろばんの右側の適当な定位点に置きます。
(これでそろばんの真ん中に計算をするスペースが出来ました) - 次に、掛けられる数の一番小さな桁×掛ける数をそろばんに置きます。この場合だと、6×78になります。
- 掛ける数は2桁なので位取りは元の位置から右に2桁移動した場所になります。位取りした位置を左手の人差し指で押さえておきます。
- 掛けられる数56の6を払ってから、6×78を計算すると468になります。
- 次に5×78を計算していきます。
- 間違えないように5を払ってから先ほど払った6の位置に計算した珠を置いていきます。
- 5×78は390で、先の計算ですでに置いてある468と計算すると答えは4,368になります。
- 最後にそろばんの右側に置いた掛ける数78を払って終了です。
そろばん掛け算:両落としのやり方と例題
両落としは、掛けられる数、掛ける数、両方ともそろばんに置かずに計算する掛け算の方法です。どちらの数もそろばんに置かないのでスピーディに計算できますが、ここで紹介した中では一番難易度が高い計算方法になります。
慣れるまでは難しく感じますが、両落としを身につけると、かけ暗算が早く習得出来るというメリットがあります。
両落とし…掛けられる数と掛ける数の桁数を足した数を定位点から移動した所に、掛けられる数の一番大きな位に掛ける数の一番大きな位から掛けていく。
両落としのやり方例題:12(掛けられる数)×34(掛ける数)
2桁×2桁の例題で、そろばん掛け算「両落とし」の解説していきます。
例題:12×34=?
- まず左手でそろばんの枠を持ちます。
- 次に、掛けられる数の一番小さな桁×掛ける数をそろばんに置いていきます。この場合だと、2×34になります。
- 珠は、掛けられる数が定位点――いわゆるカンマ(コンマ)と呼ばれる場所に置くようイメージします。
- 掛ける数は2桁なので位取りはこの位置から右に2桁移動した場所。ここを左手の人差し指で押さえます。
- 元の定位点のすぐ横の右隣の桁に珠を置いて計算していきます。
- 掛けられる数である2は払っておきます。(実際には両落としは掛けられる数、掛ける数ともにそろばんに置いていないのであくまでイメージになります)
- 2×34は68になります。
- 10×34を計算すると340になります。
- 次の珠は、10×34の右隣の桁つまり先ほど払った2の位置に置きます。
- これで先に計算した68と340を計算します。
- 答えは408になります。
そろばん掛け算:片落としのやり方・例題
片落としは、掛けられる数のみをそろばんに置いて計算する掛け算の方法です。そろばん教室では「片落とし」で掛け算を教えている教室が多く、一番ポピュラーな掛け算のやり方になります。
いずれは両落としを覚えたほうが、計算スピードが早くなりますが、まずは、そろばん掛け算に慣れるために、片落としのやり方で解いていきましょう。片落としは、桁数が増えてくる3級から1級の問題に適しています。
当記事中の後半の掛け算練習問題では全て「片落とし」のやり方で解説しています。
問題の片方を置く場合(片落とし)
かけられる数(実(じつ))はそろばん上に置きますが、かける数(法(ほう))は置かず、問題を見ながら解いていく方法
引用:かけ算のやり方って?(あおばそろばん教室)
片落としのやり方例題:12(掛けられる数)×345(掛ける数)
例題:12×345=?
2桁×3桁の例題で解説していきます。
- 掛けられる数の12をそろばんの左側の適当な定位点に置きます。
- 掛ける数は3桁なので位取りは元の位置から右に3桁移動した場所になります。ここを左手の人差し指で押さえておきます。
- 片落としでは掛ける数、この場合だと345は置かないので早速計算を始めていきます。
- 2を払ってから2×345をまず計算していきます。
- 2×345を計算すると690となりそのままそろばんに置いていきます。
- 次に1×345を計算します。
- 1を払ってから2を置いていた桁に珠を置いていきます。
- 1×345は345となり、既に置いていた690と合わせると4,140。これが答えになります。
片落としで位取りを正しく行えば、どこが答えの一の位かがすぐに分かるので計算ミスを大幅に減らすことができます。
そろばん掛け算|小数点の計算方法と考え方

小数点の掛け算の計算も、先述した位取りを使って計算していきます。ただ、小数点の場合、掛ける数によって少し法則が変わります。小数点の計算は掛ける数が1以上の時と、1未満の時に分けて解説します。
掛ける数が、小数点1以上の時の位取り
例:12×123.4、12×12.34、12×1.234
掛ける数の小数点が「1」以上の場合は、掛ける数の桁数にプラス1桁するやり方で計算できます。小数点の場合、小数点以下の桁は無視します。小数点以下の桁数も、いくらあっても無視します。
ですので、上記の例題に当てはめると、
- 12×123.4は123.4は3桁なのでプラス1して右に4桁移動したところ
- 12×12.34は右に3桁移動したところ
- 12×1.234は右に2桁移動したところ
上記の場所が、答えの一の位になります。
掛ける数が、小数点1未満の時の位取り
掛ける数の小数点が「1」未満の位取りは、先述したプラス1の法則は使用できません。
例:12×0.123
例題の0.123のように掛ける数が1未満で小数点第1位に0以外の数があるときは、元の位置から1桁右が答えの一の位になります。
例:12×0.01234
0.01234のように掛ける数が1未満で小数第1位が0、第2位に0以外の数があるときは、元の一の位と同じ桁=位取りせずそのままの桁が答えの一の位になります。
そろばん掛け算|2桁・3桁の練習問題

ここからは、そろばん掛け算の練習問題を何パターンか解いていきます。2桁の掛け算、3桁の掛け算で間違えやすいポイントは以下2点。
- 問題に0が入り、計算する桁を間違える
- 位取りを間違える
問題に0が入り、計算する桁を間違えることに関しては、ある程度の慣れと感覚が必要かもしれません。
0はそろばん上になにも珠を置かないことになります。ですが、0は数字として存在しない訳では無いのでそれを踏まえて計算していく必要が出てきます。
「0」が入った問題や、位取りに気を付けつつ、以下、掛け算問題を練習してみましょう。
※練習問題は全て、片落としでの計算になります。
そろばん掛け算:3桁×1桁の練習問題
例題:120×3
- 片落としで計算していくので120を定位点に置きます。
- ここでも位取りをしっかり行います。掛ける数は3で1桁なので1桁右に移動した位置が一の位になります。
- 120×3の、0×3は0が置かれていた桁のすぐ右隣となります。
- 次に2を払って2×3は6で、これは0が置かれていた桁に置きます。
- 最後に1を払って1×3は3で、これは2が置かれていた桁に置きます。これで答えの360になりました。
そろばん掛け算:2桁×2桁の練習問題
例題①:90×38
- まず掛けられる数である90を定位点に置きます。
- 次に位取りをします。掛ける数である38は2桁なので2桁右に移動した位置が一の位になります。位取りした位置を左手の人差し指で押さえましょう。
- では計算を始めていきます。まず0×38計算しますが、0なので何も置くことができません。
- 次に9×38を計算するので9を払っておきます。
- 9×38は342です。そして位取りしていた定位点から読み取った答えは3,420となります。
例題②:72×15
- まず掛けられる数である72を定位点に置きます。
- 次に位取りをします。先ほどと同じく掛ける数である15は2桁なので2桁右に移動した位置が一の位になります。位取りした位置を左手の人差し指で押さえて計算を始めていきます。
- 2を払ってから2×15をまず計算します。2×15は30です。
- 次に7を払ってから7×15を計算すると105になります。位取りしていた定位点から読み取った答えは1,080となります。
そろばん掛け算:2桁×3桁の練習問題
例題:62×815
- まず掛けられる数である62を定位点に置きます。
- 次に位取りをします。掛ける数である819は3桁なので3桁右に移動した位置が一の位になります。
- 位取りした位置を左手の人差し指で押さえてから計算を始めていきます。2桁×3桁でも特に計算のやり方に変わりはありません。
- まず2を払ってから2×815で計算します。2×815は1,630です。
- 次に6を払ってから6×815を計算すると4,890になります。そして位取りしていた定位点から読み取った答えは50,530となります。
そろばん掛け算:3桁×3桁の練習問題
例題①:736×109
- まず掛けられる数である736を定位点に置きます。
- 次に位取りをします。掛ける数である109は3桁なので3桁右に移動した位置が一の位になります。
- 位取りした位置を左手の人差し指で押さえてから計算を始めていきます。桁数が増えても計算のやり方に変わりはありません。
- まず6を払ってから6×109で計算します。6×109は654です。
- 次に3を払ってから3×109を計算すると327になります。
- 最後に7を払ってから7×109を計算すると763になります。
- そして位取りしていた定位点から読み取った答えは80,224となります。
例題②:402×316
- 掛けられる数である402を定位点に置きます。
- 次に位取りをします。掛ける数である316は3桁なので3桁右に移動した位置が一の位になります。位取りした位置を左手の人差し指で押さえてから計算を始めていきます。
- まず2を払ってから2×316で計算します。2×316は632です。
- 次に0×316は0なので何も置くことができません。
- 次に4を払ってから4×316を計算するとき、0があった位置に珠を置くのを間違えないようにしましょう。4×316は1,264になります。
- そして位取りしていた定位点から読み取った答えは127,032となります。
まとめ
今回は、そろばんの掛け算についてご紹介しました。まず、そろばんの掛け算をこれから始めるという人は、問題を解く前に、九九をしっかりと覚えておくことが必要になります。
九九を覚えたら、掛け算問題に挑戦してみましょう。そろばんの掛け算には、両おき、片落とし、両落としの3パターンの解き方があります。
両おきは、初めに「実」「法」を置き、片落としは「実」のみを置き、両落としはどちらも置かないやり方です。
どの解き方が良いというわけではありませんが、上級者向けの両落としを習得した方が、最速で掛け算問題を解くことが可能です。
両落としには、「実」「法」を置かないため、両おきや片落としと比較すると、珠を入れたり、払ったりする手間が省け、時短に繋がるメリットがあります。
また、計算初めに「実」や「法」を入れないため、珠算式暗算の練習にもなるメリットもあります。しかし反面、正しく両落としのやり方を身につけていなければミスに繋がってしまう可能性もあるというデメリットもあります。
そろばん教室にもよりますが、初めから両落としを教える教室もあれば、基本の両おきから片落としを教えていき、最後に両落としを習得するという教室もあります。
それぞれのそろばん教室の教え方にもよりますが、初心者であれば、両おき、もしくは、片落としから始めるところが多いでしょう。
(ちなみに、筆者の子どもが習っているオンラインそろばん教室は、基本中の基本である、両おきから指導していました)
そろばんの掛け算は「筆算による掛け算をそろばん特有の置き方で行っているようなもの」です。法則や、やり方を理解できると、いくら桁数が増えても正確に計算できるようになります。
まずは、掛け算問題を繰り返し練習して慣れることと、基本的な解き方を習得することを意識して取り組むと、両落としの習得へと繋がります!








コメント
かける数が1未満の小数点の位取りですが、0.000123など少数第2位以下に0以外の数字が初めて出てくる場合はどうなりますか?